【千葉交通】蓮沼循環バス、令和3年9月末で廃止

 千葉交通が運行する蓮沼循環バス(横芝駅~上堺四つ角~蓮沼郵便局~南浜海岸~上堺四つ角~横芝駅、22.3㎞)が、令和3年9月30日をもって運行を終了する見込みであることが明らかとなった。
 令和2年3月25日の「令和元年度第3回山武市地域公共交通活性化協議会」(書面開催)で、全会一致により原案通り承認されている(会議資料は掲載されていない)。さらに、「山武市議会だより」の令和2年11月号に、市議会議員の質疑と山武市総務部長の答弁で、運用終了についてのやりとりが掲載されている。
 蓮沼循環バスは千葉交通の路線廃止を受けて、平成8年10月1日に当時の横芝町(現:横芝光町)と蓮沼町(現:山武市)の代替バスとして運行している。多古営業所が担当し、現在は浜回り・丘回り、横芝駅~上堺四つ角間の区間便を含めて合計8便運行している。「浜回り・丘回り」といった呼び方も独特で、時刻表や行先表記でも使われている。「南浜海岸先回り」や「南浜海岸/蓮沼郵便局経由」とは言わない。浜回りと丘回りの設定もランダムだが、朝は丘回り、夕方は浜回りの方が多い。
 山武市では蓮沼循環バスの運行を終了する理由として、「利用者の減少に加え、山武市では基幹バスや乗合タクシーの利用が進んでいることなどから、役目を終えつつある」と説明しており、代替となる交通手段として、蓮沼地域からJR松尾駅、松尾町山室方面を経由する循環路線を検討しているという。現在、山武市と横芝光町、千葉交通と協議を重ね、運行の終了について調整を進めている。また、蓮沼地域はちばフラワーバスが海岸線(成東駅~白幡四ツ角~成東海岸~蓮沼南~南浜~南川岸~白幡四ツ角~成東駅)を運行している。
 横芝光町のホームページに蓮沼循環バス関連の情報は掲載されていないが、横芝駅から屋形南付近は横芝光町循環バスが運行されているので、代替手段は確保されている。 
CSC_2960.JPG↑横芝駅で発車待ちする丘回りの蓮沼循環バス(日野SKG-KR290J1)
■「横芝海のこどもの国」と「蓮沼ウォーターガーデン」
 高度経済成長期のレジャーブームは、夏になると首都圏から千葉県の海水浴に訪れるようになった。内房線や外房線も「房総夏ダイヤ」が組まれていたが、九十九里浜の各海水浴場へは、大網、東金、成東の各駅からそれぞれ、小湊鐵道、九十九里鐵道、京成電鉄の各社がそれぞれ運行していた。九十九里鐵道の路線バスには「片貝海水浴場」の方向幕が入っていた。このように、千葉県の鉄道・バスは、海水浴客輸送も大きな役割を担っていた。
 蓮沼循環バス沿線の蓮沼海岸には、南浜、中下、殿下の各海水浴場のほか、旧横芝町(現:横芝光町)は屋形海岸の近くに、昭和47年7月に千葉県内初の大型プール「横芝海のこどもの国」が開設された。「横芝海のこどもの国」は、南川岸停留所から徒歩だった。
 さらに、昭和46年に建設省の「レクリエーション都市整備要網」を踏まえ、千葉県では蓮沼村(現:山武市)の蓮沼海浜地区を「蓮沼海浜公園」に指定し、第三セクターの千葉県レクリエーション都市開発を設立。同社では昭和50年の「蓮沼ウォーターガーデン」の開設を皮切りに、「こどものひろば」(ミニSL、展望塔)、「蓮沼ガーデンハウス マリーノ」(宿泊施設)、「テニスガーデン」などを整備した。夏のシーズンになると、蓮沼方面のバスも賑わっていたのであろう。当時は運行回数もあったはずだ。
 千葉交通では京成電鉄との連絡運輸により、京成成田駅から南浜、中下、殿下の各海水浴場や、「横芝海のこどもの国」への直通バスを運行した。期間限定免許のため、毎年運輸当局に申請し、認可を受けていた。京成電鉄では電車とバスの往復運賃に、休憩所の割引券がセットとなったクーポン券を発行するなど、海水浴輸送に力を入れていた。このほか、千葉交通は八日市場駅~野手浜~栢田浜~横芝駅、八日市場駅~吉崎海岸、旭車庫~旭駅~神宮寺浜など、九十九里浜沿いの集落を結ぶ路線を多く運行しており、九十九里浜は活気を呈していた。さらに、蓮沼地区は平成2年9月30日まで、大平線(横芝駅~上堺四つ角~南浜~大平小前~松尾駅~成東駅)が運行されていた。
 しかし、レジャーの多様化によって海水浴場来場者数が減少するとともに、九十九里方面も千葉東金道路の開通などでマイカー利用が増え、公共交通機関を利用した海水浴輸送は減少していった。もっとも、 最近はレジャー(今はキャンプなどのアウトドア)やレクリエーションという言葉はあまり聞かなくなった。
 それでも、平成元年3月発行の「京成電鉄沿線案内」では「蓮沼ビーチ・蓮沼海浜公園/成田空港駅下車夏期臨時バス40分」と掲載されていた。その京成電鉄も、平成3年3月に成田空港ターミナル乗り入れが実現すると、本来の空港アクセス輸送に力を入れるようになり、海水浴客の連絡運輸を終えた。
 一方、千葉交通では横芝駅~横芝海のこどもの国~蓮沼ウォーターガーデン間に臨時バスを運行していた。平成11年に京成成田駅で入手したチラシによると、臨時バスは14往復設定されていた。この年が特別多かったわけではないし、前年の実績を踏まえて設定したはずで、中学生や高校生らが利用していたようだ。ただし、実際に使用されていた車両は、チラシのような成田営業所に所属する新塗装の日野U-HT2MLAAではなく、多古営業所の旧塗装車の日野P-RJ172BAが2台だった。行先方向幕は「千葉交通」と表示していた。
 平成13年4月に横芝海のこどもの国~成田空港第2旅客ターミナル間を結ぶ空港シャトルバスの開業によって、この臨時バスも使命を終えた。横芝海のこどもの国も、施設の老朽化によって平成15年8月をもって閉鎖となった。これに伴い、停留所名も横芝屋形海岸に改称した。
 令和2年夏は、ちばフラワーバスが海岸臨時バス(成東車庫~成東駅~本須賀海岸~ウォーターガーデン~展望塔南浜海岸間、成東車庫で「フラワーライナー」と接続)、九十九里鐵道が急行蓮沼ウォーターガーデン線(JR千葉駅~ウォーターガーデン間、JR千葉駅~片貝駅間の「九十九里ライナー」を延伸)を運行した。都市部から離れていることが幸いし、コロナ禍でもプールを営業できたのは何よりである。ただし、海水浴場は開設されなかった。
千葉交通チラシ.jpg↑臨時バスのチラシ。裏面に時刻表などが記載
蓮沼循環バス乗車記
 12月のある土曜日、京成成田駅東口から「横芝光号成田便」に乗車し、横芝駅9:40発の浜回りの蓮沼循環バスに乗り継いでみた。横芝9:36着の銚子行から降りてきた数人も、マイカーの出迎えを受けたりして早々と姿を消した。人影がほとんどない駅前広場に、発車3分ぐらい前になってバスが回送で現れた。車両は日野SKG-KR290J1(社番:35-12)で、成田営業所からの転入車だ。今や多古営業所の中型車は日野レインボーⅡが主力となり、20年ぐらい前で思考回路が止まっているおじさんは、旧塗装の日野P-RJ172BAのイメージが強い。それに、多古営業所の社番が「3」に変更されているのも馴染めない。かつては多古営業所が「9」、小見川車庫が「3」なのだった。このような昔話を思い出しながら、「蓮沼循環・浜回り」のLEDを表示を出したバスに乗り込んだのは、見事に私一人だった。
 上堺地区はまとまった集落があるのだが、朝夕は利用者がいるのだろう。上堺四つ角からは、浜回りは直進、丘回りは右折する。南川岸には14階建てのホテル「テンダーヴィラ九十九里」がある。シーズンオフなので、車が数台しか止まっていないものの、夏は賑わうのであろう。
 結局、誰も乗り込まないまま殿下海岸で降車した。殿下海岸を選択したのは、「蓮沼ウォーターガーデン」が近く、見てみたかったためだ。女性乗務員の「お気をつけて~」の声に見送られ(廃止代替バスは嘱託乗務員の担当が多いので意外だった)、これから横芝駅に向けて利用者がいることを期待しながら見送った。令和2年12月17日の当ブログで記載したように、昭和55年に廃止された殿下車庫の跡地は分からなかった。海水浴シーズンは、京成成田駅(のちに成田空港駅へ変更)からの臨時直通バスが休憩で使用していたのであろうか。
DSC_2921.JPG↑殿下海岸停留所で降車
DSC_2925.JPG↑蓮沼海浜公園で待機する山武市基幹バス
DSC_2927.JPG↑蓮沼ガーデンハウス マリーノ
DSC_2929.JPG↑蓮沼ウォーターガーデン中央ゲート
DSC_2933.JPG↑ウォータースライダー㊧
 県道30号・飯岡一宮線を南浜方面に歩いていると、右折する蓮沼海浜公園行の山武市基幹バスと出会う。蓮沼海浜公園停留所が「蓮沼ガーデンハウス マリーノ」駐車場入口にあり、折返し10:10発の成東駅経由さんぶの森元気館行となる。バスを降りて蓮沼ガーデンハウスの館内に入った人、バス停で待っている人がおり、これから成東駅に向かって乗客が増えるはずなので、少なくとも蓮沼循環バスよりも利用者がいることは確かだ。さらに、山武市基幹バスを眺めたあと、海沿いの道路を歩いていると、横芝屋形海岸10:05発の空港第2旅客ターミナル行が通り過ぎて行った。蓮沼付近はちょうど山武市と横芝光町の境界で、空港シャトルバスと山武市基幹バスとエリアが重なり、横芝光町循環バスを含めると、交通空白地帯の割にバス網が充実している。連携を図っているわけでないので、同じような時間帯となってしまうことがある。昔ながらの集落を通る県道を運行している蓮沼循環バスは、時代に取り残されてしまった。蓮沼循環バスは廃止代替バスといえども、千葉交通の一般色の車両で運行する最後の路線なのに寂しい限りだ。
 蓮沼海浜公園はシーズンオフとあって人影はほとんどない。中央ゲートの近くにバスベイがあり、プール開設期間中はちばフラワーバスと九十九里鐵道の臨時停留所が設置される。「こどものひろば」の展望塔は補修工事中で、足場が組まれて見ることができなかった。中下海岸の交差点から、蓮沼循環バスが通る県道に向かい、ちばフラワーバス海岸線の南浜まで歩いてみる。
 観光協会停留所のポールは、時刻表が車道に向けて立っている。意図的ではなく、台風か何かで倒れたあと、誰かが戻した時に逆にしてしまったと思われる(営業所の社員であれば、このように設置しないはず)。円盤の手書きの停留所名も薄くなってしまっている。千葉交通のローカル路線は、このような木柱のポールが多い。ポールは上下兼用で片側にしかなく、両方の時刻表が掲載されている。運行系統や運賃表がないので、よそ者には不親切だ。おおむね利用者の多い方向に建っているのだが、蓮沼循環バスはランダムだ。停留所名の由来となっている観光協会らしき建物も看板も見当たらない。かつては蓮沼村観光協会があったのか。
 県道は途中から歩道が途切れ、木の枝が道路にはみ出している箇所もあり、交通量が結構あるので歩きにくい。大型トラックの通行も多い。何人かのサイクリストにも抜かされた。歩いている人とほとんどすれ違わなかった。県道沿いは住宅や商店、別荘などの空き家(廃墟)が目立つのは哀れだ。それだけ沿線住民が減少していることが分かる。潮風で傷みやすいことに加え、平成23年3月11日の東日本大震災や、令和元年9月の房総半島台風で、荒廃ぶりに拍車をかけたのかもしれない。
DSC_2934.JPG↑観光協会停留所のポール。観光協会はなく、時刻表は道路を向いている
 南浜海岸停留所は、交差点の手前にあり、廃墟の脇にポールが立っている。停留所名は貼られている。店屋だったのか倉庫だったのか。廃墟となってから年季が入っている。ちばフラワーバスの南浜停留所は交差点の先で、約100mほど離れている。発車時刻の11:01までしばらくあるので、海でも眺めながら時間を潰そうと思っていたが、南浜海岸は殿下海岸、中下海岸とともに海岸基盤整備工事中につき通行止めとなっていた。ダンプカーがひっきりなしに行き交っている。展望塔ともども、シーズンオフに工事を完成させるようだ。
 数分遅れて現れた南川岸経由成東駅行に乗車した。車内に利用者はおらず、私1人だけだった。車両はちばフラワーバス最古参の日野KK-RJ1JJHK(社番:6409)だが、ICカードに対応している。海岸線も補助を受けて運行を維持しているが、成東駅に近づくにつれて乗り込む人が何人もおり、蓮沼循環線よりも活気があった。
DSC_2936.JPG↑廃墟の前に立つ南浜海岸停留所のポール
DSC_2940.JPG↑ちばフラワーバスの南浜停留所のポール

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 7

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い

この記事へのコメント

わさびくま322
2020年12月24日 19:23
はじめまして。

地元が蓮沼循環線の沿線ですので、廃止は衝撃でした…

ただ近年は利用者が減少しており、特に日中は利用者が皆無という日もありますので、やむを得ない面もありますね。

屋形方面に向かう横芝光町の循環バスは本数が少なく、さらに現行の蓮沼循環線とは異なるルートをとっていますので、蓮沼循環線の廃止でどのように変化するかも注目しています。

横芝駅を発着するバスは、かつては上堺地区や旧光町、野栄町方面を結ぶ路線をはじめ、芝山を経由して京成成田駅まで結ぶ路線もあったと思います。また、夏期の蓮沼ウォーターガーデン、子供の国のシャトルバスも懐かしいです。

横芝光号成田便の開設で数十年ぶりに成田とを結ぶ路線ができて嬉しかったのですが、一方でローカル路線は利用者が少なくなり、いつまで持つかと思っておりました。

横芝駅を発着するもう1つのローカル路線である水戸線も、利用者が少なくなり予断を許さない感じがします。かつて営業所を擁していた横芝の路線バスの衰退に、悲しさを感じずにはいられません…
板橋バス太郎
2020年12月24日 21:48
>わさびくま322さん
コメントありがとうございます。地元の立場から今後ともご教示いただければありがたいと存じます。
撮影した12:40発の丘回りは2人乗車したのが奇跡のようでした。この写真を撮影後に乗車した13:05発の多古車庫行も私だけで発車しました。
平成初頭までは横芝駅から八日市場駅を結ぶ路線も複数ありましたね。近隣では八日市場駅も千葉交通の路線自体が消えてしまいました。また、旭や小見川も往時の面影がありません。成田空港シャトルバスと横芝光号成田便に期待したいところです。