【日東交通】上総湊駅(新)

 JR内房線は沿線の過疎化の進行や館山自動車道の開通、海水浴客の減少などで利用者が減少しており、特急「さざなみ号」も大幅に削減されたうえ、君津以南は廃止された。
 ただし、土休日運転の「新宿さざなみ号」は上総湊に停車する。富津市天羽地区の中心部で、それなりの乗降があったものの、富津市役所の移転や天羽高校の通学生の減少により、乗降客が大幅に減少している。千葉県及びJR東日本の統計によると、平成元年度の乗車人数は2,150人、東京湾アクアライン開通後の平成10年度は1,596人、平成20年度は985人と1千人台を割り込み、平成30年度は709人と、30年間で3分の1と大幅に落ち込んでいる。
 平成初頭まで直営駅で、売店もあった。現在は業務委託駅で、平成29年12月12日までで「みどりの窓口」が閉鎖され、夜間と早朝は無人となる。また、施設関係では館山保線区上総湊保線管理室も置かれていた。さらに、国鉄時代の昭和57年11月14日まで貨物扱いが行われ、側線もあったが撤去されている。構内は1面2線で、朝2往復、夕方1往復の折返し列車が設定されている。
DSC_0300.JPG↑降車専用ポールと上総湊駅
 日東交通の一般路線は、駅前通り(千葉県道236号・上総湊停車場線)に面した、富津営業所湊出張所の一角がバス待合所となっている。定期券・回数券発売窓口も併設されている。駅前に事務所、バス乗り場、車庫が併設されているのは、日東交通グループの共通点で、鴨川駅前(鴨川日東バス)、館山駅前(館山日東バス)も同様の形態だ。このような形態は、国鉄バスを中心に地方などで見られたが、市街地は敷地が狭いことや、利用者の減少による合理化、建物の老朽化、資産の有効活用などで郊外へ移転してしまい、次第に見られなくなっている。まさに昭和30年代のバス黄金時代の面影を残している。手前には両総通運の営業所があったが、現在は月極駐車場となったので、建物がよく見えるようになった。
 上総湊駅から発車するのは、竹岡線(上総湊駅~竹岡駅前~高島別荘入口~東京湾フェリー)をメインに、戸面原ダム線(上総湊駅~環駅~上後~関豊駅~戸面原ダム)、湊富津・笹毛線(上総湊駅~笹毛~佐貫町駅~大貫駅前~富津公園)の3路線で、合計しても1日二十数本に過ぎない。特に、湊富津線の上総湊駅発は朝のみ3本で、しかも1本は土休日運休だ。各路線とも内房線と接続を図っており、2台同時に発車する光景が見られる。現在、3台同時発車はない。最盛期の古き良き時代は、内房線との乗り換え客で賑わっていたのであろう。
 「バスファン」昭和57年2月号によると、上総湊出張所には昭和56年11月21日現在で25両(乗合21両、貸切4両)が配置されていた。当時は車掌を含めて多くの社員が勤務し、宿泊する行路もあったのであろう。しかし、利用者の減少による採算性の悪化により、湊出張所は平成6年10月1日に天羽日東バスへ分社化され、本社営業所となった。その後も路線網の縮小の影響が続いて、平成29年10月1日に再び日東交通と合併し、湊出張所となった。運行管理業務だけでなく、窓口業務も行っているので、車庫よりもワンランク上ということか(木更津営業所平岡車庫は窓口業務を行っていない)。
DSC_0295.JPG↑昔ながらのバス乗り場。東京湾フェリー行が発車を待つ。手前が事務所、奥が乗務員休憩室
CSC_0302.JPG↑窓口も営業中
DSC_0120.JPG↑発車時刻表と天羽日東バス当時の路線案内図。笹毛付近や金束方面を修正しているので、平成6年の分社当時の路線図であろう。
 建物は駅前通りから見て、手前が事務所、その奥に乗務員休憩室があるが、2棟は繋がっており、あとから増築したと思われる。乗務員休憩室のうち、2階は宿泊行路用の寝室だったようだ。現在は勤務する社員は少なく、事務所も乗務員休憩室も2階部分は持て余しているようだ。当時は整備士が何人も常駐して、現場も活気を呈していたのであろうが、現在は車検等は富津営業所併設の本社車両課で施工している。給油設備はなく、国道127号線沿いのガソリンスタンドで行なっている。洗車機もないため手洗いだ。
 出張所構内に全車が留置できないことから、未舗装の第二車庫もあり、予備車や社員の自家用車が止まっている。昔はもっと広々していたが、旧国鉄貨物扱所跡地が駅前広場として整備されたのに合わせて(平成8年3月竣工)、車庫も縮小されてしまった。内房線の車窓からこの第二車庫を眺めるのが楽しみだった。
DSC_0275.JPG↑構内。台風で建物のトタン屋根は剥がれ、民家の屋根瓦は剥がれてしまった
DSC_2633.JPG↑洗車機がないので手洗いとなる。このような地道な作業をしている人たちが、バスを支えていることを忘れてはならない
DSC_0259.JPG↑未舗装の第二車庫
 構内には木造の旧整備工場が残っていたが、整備は行っていなかったので、バスや社用車などのガレージとして使用されていた。しかし、令和元年9月9日未明に上陸した台風15号で、建物が一部損壊したために解体された。備品類や屋根のトタンが駅方向に吹き飛び、従業員は後片付けに追われたという。事務所のトタン屋根の一部は両総通運の月極駐車場にも落下し、止めてあった自動車が破損した。さらに、駅前通りにあった「天羽日東バス本社営業所」の看板も落下した。木造車庫はとりあえず解体したたけで整備されておらず、土台があったところや段差にはカラーコーンやポールの台座などを置いて、バスに注意を促している。奥にはコンクリート片が積まれている。現在も事務所のトタン屋根は一部がめくれ上がったままだ。上総湊駅周辺も被害が大きく、屋根がビニールシートで覆われた家屋や、崩壊した建屋が目について痛々しい。停電もあったという。台風から約2カ月後に訪問したが、県内各地で被害が大きく、屋根を修理する業者の手が回らない状態だという。

 貴重な木造車庫が消えたが、古風な事務所も近いうちに建て替えられ、コンパクトな建物になるであろう。「普通の車庫」となってしまうのは寂しい限りだ。
 湊出張所は天羽日東バスの車両をそのまま引き継いでおり、9台が上総湊出張所に常駐している。ただし、天羽日東バス末期に大幅に入れ替わった。現在の上総湊出張所は、日産ディーゼルKC-RN210CSNが5両、日産ディーゼルKC-RM211GSNが2両、三菱PA-ME17DFが2両が常駐している。このうち、日産ディーゼルKC-RN210CSNは平成10年式で、登録番号は全て「袖ヶ浦22」となっている。天羽日東バス時代に移籍した車両と、日東交通合併後に転入した車両がある。
DSC_0273.JPG↑湊出張所の主力車である日産ディーゼルKC-RN210CSN
CSC_0208_20110503_4378.JPG↑在りし日の木造車庫(平成23年5月3日撮影)
※おことわり
 台風15号の被害状況は、現地確認をはじめ、日東交通の従業員や駅の近くに住んでいる方の証言をもとにまとめました。また、住民の方からは、スマホで撮影したブルーシートに覆われた木造車庫の写真を見せていただきました。この場を借りて、被災した方々に心からお見舞い申し上げますとともに、1日も早い復興をご祈念申し上げます。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

ナイス

この記事へのコメント